静けさと彩りと

*そふぃーの森*

てぶくろ

そろそろ手袋が必要な寒さになってきましたね。
この時期になると思い出す事があります。


中学生の頃、背の低いわたしは
ほとんどの男子に
「背、伸びたんじゃない?」
と手をかざして身長を比べる動作から
おでこをチョップされ、
からかわれていました。
プロレス全盛期でしたからね。
ほぼ毎日、誰かにからかわれ
時には挨拶代わりに笑い
時にはかなり痛い思いもしました。

その中のある男子とは、
特別仲が良かった訳ではないけれど
恒例のお遊びになっていました。
明らかに背の高い彼は、おふざけで
けれど決して痛い程のことはせず
会話の前には一度ボケる…
そんな雰囲気で互いに笑っていました。

お遊びなのですが、中学生のノリは
結構しつこく続くので
わたしもいつか反撃したいと
アレコレ考えていました。

そんなある日、土曜の下校時間。
彼が手袋をしているところを見て
「あ、ピンクの手袋してるぅ~」
と、わたしは軽くからかいながら
綺麗な薄ピンクの手袋が可愛いくて
ちょっと羨ましくなっていました。

男子でピンクを身につけるのは珍しく
彼らしくなかったので
ふと気になって言ったのです。


「男がピンクなんて変でしょ。
白だと思って姉さんから貰ったら
ピンクだったんだ。
俺、色弱なんだよ
みんなには言ってないけど。」

「あの…ごめんね
あんまり綺麗な色だったからつい
色弱って全然知らなくて。
困ったら言ってね
背は低いけど、色は分かるから」

「気にすんなって。
ここまで薄い色は分かんねーけど
大体は分かるから」


確か、その様な会話をして
おでこを軽くコツンとチョップされ
いつものノリで笑って終わったように
記憶しています。


わたしは身長が低いこと以外に
色が黒い事もからかわれていました。
でも彼には一度も黒いと言われた事が
無かったと思います。
色黒は、笑えないコンプレックスで
言われる度、結構傷付いていたので
よく覚えています。

肌の色が、はっきり分からなかったのか
「色白の黒人」とからかわれるのを
わたしが本気で嫌がっていたのを
彼が知っていたのかは
確かめる事もなく分からないままです。

彼はわたしに
いつもユーモアで接してくれたのに
うっかり酷いことを言ったあの時を
未だに忘れることはありません。



色白ですらりと背が高く
瞳の色が薄くて綺麗な男の子でした。

sophie